初めての利用者さんが、作業に慣れていくまで

初めて来所する日は、ほとんどの方が静かです。
話さないわけではないけれど、どこに座ればいいのか、何をすればいいのかを探しているような時間が流れます。


こちらから細かく説明をすることは、あまりありません。
まずは椅子に座って、周りの様子を見てもらいます。
流木を並べている人、タグを付けている人、黙々と手を動かしている人。それぞれの作業の音が、小さく重なっています。


最初の日は、作業をしないこともあります。
見ているだけで終わる時間も、ここでは大切な過程です。


何日か通ううちに、「少しやってみます」と声が出る瞬間があります。
流木を一本持ってみたり、タグを一枚だけ付けてみたり。本当に小さな動きです。


うまくできるかどうかは、あまり問題ではありません。
手順を覚える前に、「ここで作業しても大丈夫だ」と感じられることの方が先だからです。


スタッフは横に立ちますが、基本的には見守ります。
困ったときだけ短く声をかける。
説明を増やすより、安心して止まれる時間を残すことを意識しています。


不思議なもので、慣れてくると作業の量は自然に増えていきます。
最初は一つだった工程が、いつの間にか次の工程まで進んでいる。
本人が気づかないうちに、「できること」が少し広がっています。


ある日、作業が終わったあとに
「今日は疲れましたね」と笑う方がいます。
その言葉を聞くと、ああ、ここで過ごす時間が日常になってきたのだと感じます。


作業に慣れる、というのは技術を覚えることではなく、
この場所で過ごす時間に体が馴染んでいくことなのかもしれません。


だから当事業所では、早く慣れてもらおうとはしていません。
少し遠回りに見える時間の中で、それぞれのペースが見えてくるからです。

 

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