なぜB型事業所が古着屋を始めたのか。「仕事らしい仕事」をつくりたかった

就労継続支援B型では、さまざまな作業が行われています。


袋詰め、シール貼り、組み立て、清掃、ハンドメイドなど、事業所によって内容はさまざまです。


私たちの事業所では、そうした一般的な内職仕事をほとんど受注していません。


その代わりに始めたものの一つが、古着屋です。


実際に店舗を構え、仕入れた古着を販売しています。


なぜ、福祉事業所がわざわざ古着屋をやるのか。


理由は単純で、私たちは利用者さんに**「仕事らしい仕事」を経験してほしかった**からです。


売れなければ、お金にはなりません


古着屋の仕事は、服を並べておけば終わりではありません。


仕入れた商品を確認する。


状態を見る。


採寸する。


きれいにする。


写真を撮る。


商品として並べる。


お客様が来れば接客する。


インターネットで販売する商品なら、梱包して発送する。


そして当然ですが、どれだけ時間をかけても、商品が売れなければ売上にはなりません。


これは、かなり当たり前の話です。


でも、この**「当たり前」こそ大切なのではないか**と私たちは考えています。


「作業をした」だけでは終わらない


福祉の仕事をしていると、「利用者さんができる作業を用意する」という発想になりがちです。


もちろん、それが必要な場合もあります。


しかし社会に出れば、仕事には必ず相手がいます。


商品なら、それを買う人がいる。


サービスなら、それを利用する人がいる。


自分では上手にできたと思っていても、売れないことがあります。


逆に、自分では何とも思っていなかった商品が、お客様に気に入ってもらえることもあります。


古着屋では、その反応が直接返ってきます。


だから私たちは、単に「今日も作業ができました」で終わらせたくありませんでした。


自分が関わった仕事の先に、本当のお客様がいる。


その経験をしてほしかったのです。


得意なことも、意外なところで見つかります


古着屋には、いろいろな仕事があります。


接客が得意な人もいれば、苦手な人もいます。


服をきれいに畳むことが得意な人もいます。


細かな商品の状態確認が得意な人もいます。


写真撮影に興味を持つ人もいます。


パソコンを使った作業が向いている人もいます。


最初から「あなたにはこの仕事が向いています」と決めることは、なかなかできません。


実際にやってみて初めて分かることがあります。


これは、私が作業療法士として利用者さんを見るときにも大切にしていることです。


「何ができないか」だけではなく、どんな環境なら力を発揮できるのか。


仕事そのものが、それを知る機会にもなります。


失敗することも当然あります


商品をきれいに撮れない。


値札を間違える。


作業に時間がかかる。


接客でうまく話せない。


もちろん、いろいろあります。


でも、それでいいと思っています。


私たちが以前から「失敗の許されるB型」と言っているのも、そのためです。


一般の会社に就職して初めて失敗するより、その前に失敗して、注意されて、やり直してみる。


その経験も、働くための準備になります。


何でも職員が先回りして失敗を防いでしまえば、きれいな作業にはなるかもしれません。


しかし、それだけでは本人の経験にはなりません。


古着屋そのものが目的ではありません


私たちは古着屋をやっています。


でも、利用者さん全員を古着屋で働けるようにしたいわけではありません。


古着に興味のない人だっています。


私たちが作りたかったのは、古着屋そのものというより、


「本当の商売の中で仕事を経験できる場所」


なのだと思います。


商品を扱う。


お客様がいる。


売上が立つ。


失敗する。


工夫する。


またやってみる。


その中で、自分の得意なことや苦手なことを知っていく。


面談室で話をしているだけでは分からないことが、仕事をするとたくさん見えてきます。


だから私たちにとって、作業は単なる時間の過ごし方ではありません。


仕事そのものが、リハビリにもなります。


古着屋は、そのためにつくった仕事の一つです。


そして今では、古着だけではなく、ハンドメイドや商品撮影、3Dプリンターを使ったものづくりなど、仕事の種類も少しずつ増えてきました。


利用者さんに仕事を合わせるのか。


仕事に利用者さんを合わせるのか。


おそらく、どちらか一方ではありません。


いろいろな仕事があって、その中から自分の力を発揮できる場所を探していく。


そんなB型が一つくらいあってもいいのではないかと思っています。


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