B型事業所で「仕事を増やす」ことは、本当に支援になるのか

そのこと自体に異論はありません。


体力、集中力、手先の器用さ、対人関係、得意不得意。
一人ひとり違う以上、同じ仕事を同じ方法で求めることには無理があります。


ただ、事業所を運営していると、ときどき逆のことを考えます。


私たちは本当に「その人に合う仕事」を探しているのだろうか。


もしかすると、


「事業所にある仕事の中から、その人ができるものを探しているだけ」


になってはいないでしょうか。


この二つは、似ているようでかなり違います。


仕事が3種類しかなければ、見つけられる「得意」も3種類しかない


たとえば、ある事業所に、


・袋詰め
・シール貼り
・清掃


しか仕事がなかったとします。


そこでシール貼りが苦手な人がいたら、「細かな作業は苦手」。


清掃の手順を覚えるのに時間がかかったら、「複数の工程がある仕事は難しい」。


そう評価することはできます。


でも、その人が古着の商品撮影をしたら、とても上手かもしれません。


ネットショップの商品説明を書くと、意外なほど言葉を選ぶのが上手かもしれない。


色や柄を組み合わせる作業では、職員よりセンスがいいかもしれません。


それは実際にその仕事をやってみなければ分かりません。


つまり、


利用者の能力を見ているつもりでも、実際には「事業所が用意できた仕事への適性」を見ているだけかもしれない。


これは、B型を運営している私たち自身が気をつけなければならないことだと思っています。


サチエル・ロビンソンでは、仕事そのものを増やしてきた


私たちの事業所では、仕事の種類をかなり増やしてきました。


古着の販売があります。


商品の仕入れ、仕分け、採寸、撮影、商品管理、店頭での仕事、ネット販売に関係する仕事があります。


ハンドメイドもあります。


素材を選ぶ仕事、組み合わせを考える仕事、実際に制作する仕事もあります。


最近では3Dプリンターも使っています。


当然、すべての利用者がすべての仕事をするわけではありません。


むしろ逆です。


仕事を増やすことで、「この人にはこれがある」が見つかる確率を上げたい。


そう考えています。


「できない」が「できる」に変わったわけではない


ここは少し大事なところです。


仕事を増やしたからといって、利用者の障害特性や苦手なことが消えるわけではありません。


不得意なことは不得意なままです。


しかし、新しい仕事をやってみると、それまで見えていなかったものが出てくることがあります。


「こんなことが得意だったのか」


「この作業なら集中が続くんだ」


「接客は苦手だと思っていたけれど、商品について説明するときはよく話せる」


そんなことがあります。


これは本人が突然変わったわけではありません。


こちらが、その能力を見る機会を用意していなかっただけです。


支援する側にとって、これは結構重い話だと思います。


人を仕事に合わせるだけではなく、仕事の側も動かせないか


一般企業では、会社に必要な仕事が先にあります。


その仕事を遂行できる人を採用するのが基本です。


一方、B型には少し違う余地があります。


もちろん事業である以上、売上も必要です。
工賃も払わなければなりません。


「利用者のためになりそうだから」という理由だけで、採算の取れない仕事を無限に増やすことはできません。


だから難しい。


それでも、


今いる人に仕事を合わせるだけではなく、今いる仕事にも人を合わせるだけではなく、その間にある「仕事そのもの」を動かせないか。


私たちはそこを考えています。


既存の仕事を細かく分けてもいい。


新しい仕事を取ってきてもいい。


商品を作ってもいい。


店をやってもいい。


企業から一部分だけ仕事を受けてもいい。


デジタル機器を使えば、これまで事業所内になかった工程を作れる可能性もあります。


仕事の選択肢が増えれば、利用者と仕事との組み合わせも増えます。


ただし、「仕事をたくさん用意すること」が目的ではない


ここを間違えると、単なる多角化になります。


古着屋をやること自体が支援なのではありません。


3Dプリンターを置くこと自体にも意味はありません。


ハンドメイドの商品数を増やせばいいわけでもない。


見るべきなのは、


その仕事が増えたことで、これまで参加できなかった人が参加できるようになったか。


これまで見えなかった得意なことが見えるようになったか。


本人が担える工程が増えたか。


そして可能なら、


それが売上や工賃にもつながっているか。


そこまで見なければ、仕事を増やした意味は薄いと思います。


「この人に何ができるか」の前に考えたいこと


新しい利用者が来たとき、


「この人には何ができますか」


と考えるのは普通です。


でも、その前にもう一つ問いを置いてもいいのではないでしょうか。


「私たちの事業所には、この人の能力を見つけられるだけの仕事があるだろうか」


袋詰めが苦手だった。


だから働くことが苦手なのか。


そうとは限りません。


清掃が続かなかった。


だから仕事を続ける力がないのか。


それも分かりません。


単に、その人と仕事の組み合わせが合っていなかった可能性があります。


そして、組み合わせを増やすためには、人だけを見るのでは足りません。


事業所側も仕事を探し、作り、変えていく必要があります。


サチエル・ロビンソンでも、まだ十分だとは思っていません。


今ある仕事の中にも、合わない人は当然います。


だから、また別の仕事を考えます。


それが商売として成立するのかも考えます。


利用者が参加できる工程があるのかも考えます。


失敗する仕事もあります。


それでも仕事の種類を増やしてきた理由は、一つです。


仕事が増えると、その人を見る角度が増えるからです。


B型事業所に必要なのは、利用者のできることを探すことだけではなく、


その人のできることが現れる仕事を探すことなのかもしれません。

 

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