「もう少し生活が安定してから」
「体調が整ってから」
「もう少し作業ができるようになってから」
就労支援の現場では、こうした言葉を聞くことがあります。
もちろん、無理をして働く必要はありません。
休むことが必要な時期もありますし、生活を立て直すことを優先した方がいい人もいます。
ただ、B型事業所を運営していると、ときどき逆のことも感じます。
働ける状態になったから働けるのではなく、働くことによって生活が整っていく人もいる。
「準備ができたら働く」という順番だけでは説明できない人が、実際にはいます。
「働く準備」は、どこまでできれば終わるのか
一般就労を考えるとき、
毎日決まった時間に起きられる。
安定して通える。
一定時間集中できる。
人とコミュニケーションが取れる。
仕事の指示を理解できる。
そういったことが「働くための準備」として挙げられます。
どれも大切なことです。
ただ、一つ問題があります。
それらを全部身につけてから仕事を始めようとすると、いつになったら「準備完了」になるのでしょうか。
実際の仕事では、体調の悪い日もあります。
失敗することもあります。
人間関係で困ることもあります。
初めて経験する仕事なら、最初からうまくできないのが普通です。
働くために必要なことの中には、働いてみなければ身につかないものもあります。
仕事があるから、生活が動き始めることもある
朝起きるのが苦手だった人が、
「今日は自分の担当がある」
と思うことで起きられることがあります。
人と話すのが苦手だった人が、商品のことなら説明できることがあります。
長い時間集中することが難しくても、自分が得意な作業なら続けられることがあります。
工賃を受け取って、初めて「自分のお金をどう使うか」を考え始める人もいます。
つまり、
生活が整った結果として仕事が始まるだけではなく、仕事が生活を整えるきっかけになることもある。
ここは、B型事業所だからこそ大切にできる部分だと思っています。
「訓練のための作業」だけでいいのだろうか
サチエル・ロビンソンでは、インターネット物販、古着販売、清掃、ものづくりなど、いくつかの仕事を行っています。
たとえば古着販売だけでも、商品の確認、採寸、撮影、登録、陳列、在庫管理、接客、梱包、発送など、いくつもの工程があります。
一人ですべてを行う必要はありません。
撮影が得意な人もいれば、商品をきれいに整えるのが得意な人もいます。
パソコン作業が得意な人もいます。
人と話す方が得意な人もいます。
仕事の種類を増やしているのは、単に事業を増やしたいからではありません。
仕事の選択肢が増えれば、その人が力を発揮できる場所も増える可能性があるからです。
実際、当事業所ではインターネット物販、古着店での仕事、ホテル清掃など、性質の違う仕事を用意しています。
できなかったら、戻ればいい
ここで大切なのは、
「とにかく働かせればいい」
という話ではないことです。
やってみて難しければ、仕事を変えればいい。
時間を短くしてもいい。
一度休んでもいい。
別の工程を試してもいい。
私たちは以前から、失敗できる場所であることを大切にしてきました。
仕事を始める前に失敗しない状態を完成させるのではなく、
失敗してもやり直せる環境で、実際の仕事を経験する。
それも一つの方法だと思っています。
「できるようになってから」では、見つからないものがある
これは仕事だけの話ではありません。
自転車に乗れるようになってから、自転車に乗る人はいません。
料理ができるようになってから、初めて料理をするわけでもありません。
実際にやってみる。
失敗する。
少し方法を変える。
もう一度やる。
その繰り返しの中で、できることが増えていきます。
働くことにも、同じ部分があるのではないでしょうか。
B型事業所だからできること
一般企業には、当然ながら求められる成果があります。
採用された人には、その会社で必要な仕事を担うことが求められます。
B型事業所は少し違います。
仕事をする場所でありながら、まだ十分にできない段階から仕事に参加できる場所でもあります。
だったら、
「働けるようになるまで待つ場所」
だけにしてしまうのは、少しもったいない。
仕事をしてみる。
自分の得意なことを知る。
失敗する。
違う仕事を試す。
少し任される。
誰かに必要とされる。
そして、また次の仕事に挑戦する。
その経験そのものが、次につながることがあります。
働くこと自体が、人を変えることがある
私たちはつい、
生活を整える → 働く
という順番で考えます。
でも実際には、
働く → 生活が整ってくる
という方向もあります。
どちらが正しいという話ではありません。
人によって順番が違うのだと思います。
だから私たちは、
「もう少しできるようになってから」
だけではなく、
「まず、やってみる方法はないだろうか」
も考えていたい。
完璧に働けるようになってから仕事を始める必要はありません。
働くという経験そのものが、その人の生活を動かすこともあるからです。
関連記事
・「できないこと」より、「任せられること」を増やしています
・「失敗できる場所が、必要だと思っています」
・「作業ができても、働けるとは限りません」
・北斗市・函館市・七飯町で就労継続支援B型を探している方へ